- 生成AIの利用率は過半数超だが労働時間・組織生産性はほぼ改善なしと専門家が指摘
- 個人の効率化が組織の成果に繋がらない背景に3つの課題があると小林氏
- 記録・要約など成果物が明確な業務にAIを絞るのが現実的な近道
生成AIを使うと仕事が速くなった気がする。そう感じるビジネスパーソンは少なくないはずだ。
パーソル総合研究所主席研究員の小林祐児氏は、生成AIの利用率はすでに過半数を超え、仕事が早くなったと実感している人は多いとPRESIDENT Onlineで述べている。
ところが、その実感は組織全体の数字には表れていない。小林氏によれば、AI活用が進むアメリカの統計を見ても労働時間は減っておらず、組織の生産性もほとんど上がっていない。日本の統計についても同様の傾向が指摘されている(調査名や対象範囲までは明らかにされていない)。個人の「速くなった」という感覚と、組織としての生産性という指標のあいだに、埋まらない溝がある。
この溝は、AIを日々の業務のどこに使っているかによって生まれている可能性がある。議事録の作成、メモの整理、過去のやり取りの検索といった記録系の作業は、AIに任せてもアウトプットの形が決まっているため、時短がそのまま成果として測定しやすい。一方、文章の下書きやアイデア出しのような場面でAIを使う場合、時短の効果は個人の感覚には残っても、会議の数や意思決定のスピードといった組織の指標には直結しにくい。
組織の生産性に還元したいなら、AIの使い所を記録・要約など定型業務の自動化にまず絞り、そこで浮いた時間を意思決定や議論に回す仕組みを先に作るべきだ。小林氏は、個人の効率化が組織の成果につながらない背景に3つの課題があると指摘しているが、記録・要約のように成果物の形が決まっている作業なら、自動化の効果を組織レベルでも検証しやすい。AIツールを配布するだけでは組織の成果につながらないという課題は、営業の現場でも指摘されている(ChatGPT配布だけでは営業が伸びなかった調査)。時短の効果を「浮いた時間で何をするか」まで設計しないまま個人の裁量に委ねている限り、利用率がいくら上がっても労働時間や生産性の統計には反映されないだろう。まず記録という測定しやすい領域でAI活用を仕組み化し、そこで得た知見を他の業務に広げていくのが、遠回りに見えて現実的な順序である。




