
- MIT調査で企業の生成AIプロジェクトの95%がROI未達と判明(取材ベースの予備調査)
- 原因は自社の商談を知らない汎用AIをただ配るだけの運用にある
- 商談を録音し一次データとして残す運用が、自社を知るAIを育てる土台になる
企業が導入した生成AIプロジェクトの95%は、投資に見合う成果(ROI)を得られていない。MIT(マサチューセッツ工科大学)発の研究プロジェクト「Project NANDA」がまとめたレポートの数字だ。300件超の企業事例と52組織への取材をもとにした予備的な調査で、著者ら自身も数値は正式な決算報告ではなく取材に基づく「方向性として正確な(directionally accurate)」推計だと留保を置いている。それでも、営業を含む多くの企業でAIが期待したほどの効果を出せていない実態は浮かぶ。
この構図は営業の現場で特に分かりやすい。ChatGPTのような汎用チャットツールは、文章の下書きやメールの推敲には使えても、自社がどんな客にどんな話をしてきたかという商談の履歴を知らない。技術の性能不足ではなく、自社の文脈を持たないまま汎用AIを配っただけで終わっていることが、成果につながらない一因だと見ていい。
これは特定の業界の話にとどまらない。営業に限らず、AI活用が「ツールを配って終わり」になっている職場は多いはずだ。生成AIの利用率が上がっても成果が伴わないとき、原因をAIの性能不足に求めがちだが、実際に欠けているのは自社の営業活動を知っているAIエージェントの方だろう。汎用のAIモデルは公開データで学習されているため、自社の商談の癖や過去の失注理由までは知りようがない。
逆に言えば、商談の音声や振り返りのメモをきちんと記録として残しておくことが、いずれ「自社を知るAI」を育てる材料になる。ボイスメモアプリを作る立場から見ると、営業現場でAI活用が止まる最大のボトルネックは技術ではなく、そもそも参照できる自社の商談データがどこにも残っていないことだ。ノウハウを持つベテラン営業ほど、その判断根拠を言語化せずに頭の中だけで完結させている。トップ営業の頭の中にしかない勘所は、他の担当者がどれだけ真似ようとしても、言語化された形で残っていなければ再現できない。
ここを記録として残す仕組みがなければ、どれだけ高性能なAIエージェントを構築しようとしても、学習させる素材自体が存在しないことになる。逆に、商談を録音して文字起こし・要約を残す習慣さえあれば、後からその記録を見返して「なぜこの提案が刺さったのか」「どこで押しが弱かったのか」を言語化し直せる。それを積み重ねた分だけ、営業組織は特定のエースに依存しない状態に近づく。AI活用の成否を分けるのは、モデルの選定より先に、自社の商談という一次データを残す運用があるかどうかだ。




