
- AI活用で向上を実感した人の54.9%は日常業務の高速化止まり、業務フロー全体の変化は1.9%
- 積極活用層でも67.7%が使いこなせず、求める支援はテンプレート集
- テンプレートは個人の迷いを解くが、情報が人へ渡る継ぎ目の設計は変えない
中小企業がAIを導入した、と聞くと、業務のかなりの部分がAIに置き換わっているように思う人もいるだろう。実態はもっと地味だ。
ラクスル株式会社が7月23日に発表した中小企業のAI活用に関する実態調査によると、AI活用で生産性や業務効率が向上したと答えた人のうち、54.9%が挙げた変化は「情報収集・文書作成などの日常業務が速くなった」だった。一方、「特定の業務を任せられるようになった」と答えた人は4.3%、「業務フロー全体が変わった」と感じる人はわずか1.9%にとどまる。AIを積極的に活用している層でも、67.7%が「使いこなせていない」と感じているという(Manegy掲載記事)。
中小企業に勤める人にとって、この数字は身に覚えのあるものかもしれない。AIで議事録を書く、メールの下書きを作る、資料の骨子を整える——手元の作業は確かに速くなった。だが、その成果物が周囲の次の動きにつながるかというと、話は別だ。誰かに共有する、記録として残す、次の意思決定の材料にする、といった「作業と作業の継ぎ目」にAIが関与している実感は薄い。
求められている支援が「すぐ使えるテンプレート集」だという見出しの方向づけは、一見理にかなっている。使いこなせない人が多いなら、決まった型を渡せばいい。調査でも2割以上が「業務への組み込み方がわからない」と答えており、テンプレートによる型の提供は最初の一歩として確かに有効だろう。
ただし、テンプレート集だけでは54.9%と1.9%の差は埋まらない。テンプレートが解決するのは「どう書けばいいか」という個人内の迷いであって、「書いたものが次に誰の手に渡り、どう使われるか」という組織側の設計ではないからだ。個人の作業をいくらテンプレート化しても、その出力を受け取る側の仕組みがなければ、業務フロー全体は変わりようがない。
むしろ着目すべきは、情報が人から人へ渡る地点そのものにAIを置けるかどうかだろう。会議はその典型例だ。参加者の記憶や個人のメモに依存していた内容が、録音を終えた時点でAIによって構造化された記録に変わるなら、共有や後日の意思決定に渡せる形が最初からできあがる。テンプレートが「個人の作業を速くする道具」だとすれば、必要なのは「継ぎ目に立つ道具」の方だ。中小企業のAI活用が個人止まりから抜け出せるかどうかは、テンプレートの充実度以上に、この継ぎ目をどれだけ埋められるかにかかっている。
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