
- AI議事録利用者の不安の1位は精度でなく情報漏洩。しかし同意を毎回取る人は22.7%にとどまります
- 比較すべきは料金や文字起こし精度でなく、保存期間・学習利用・削除ポリシーの3つの軸です
- メモリスはAI処理完了後に音声データを即時自動削除し、音声そのものは手元に残りません
会議をAIに録音させることに、もう抵抗はない。そう考える人は少なくないはずだ。文字起こしの精度は年々上がり、要約も自然になった。導入をためらう理由は、もうほとんど残っていないように見える。
ところが合同会社MiraLabが800人に聞いた調査では、AI議事録・AI文字起こしを実際に利用している人は69.4%にのぼる一方、利用時に最も多く挙げられた不安は「文字起こし精度」ではなく「情報漏洩・セキュリティ」だった(42.8%)。使うと決めた人ほど、使いながら不安を抱えている。
不安の中身をもう少し追うと、輪郭がはっきりする。録音や文字起こしへの参加者の同意を「毎回、事前に取っている」人は22.7%しかいない。勤務先で利用ルールが「明確に整備されている」のも18.6%にとどまる。多くの人は不安を感じながら、その不安を運用のルールに落とし込めていない。
料金表や文字起こし精度を比べている限り、この不安は解消しない。見るべきは別の場所にある。音声データがどれだけの期間残るか。その音声が、あなた以外の誰かのAI学習に使われていないか。そして、そのデータがどう消えるか。この3つを各社の公開情報で突き合わせると、サービスごとの違いがはっきり見えてくる。法人で導入する前に確認しておきたい実務チェックリストも、後半に置いた。
※本記事のサービス仕様は2026年8月時点の各社公開情報に基づきます。契約・利用前に必ず最新の公式情報でご確認ください。一般的な料金・対応言語・機能の比較は【2026年版】AI議事録アプリおすすめ比較で扱っています。
保存期間・学習利用・削除ポリシー|見るべき3つの軸
文字起こしのセキュリティを比較するとき、多くの記事は認証の有無から入る。ISO27001(情報セキュリティの管理体制を保証する国際規格)や、SOC2(クラウドサービスの内部統制を第三者機関が監査する認証制度)を取得しているかどうかだ。これは間違いではない。ただし認証は最低限の土台であって、実際に情報漏洩のリスクを左右するのは別の場所にある。
軸は3つある。
- 保存期間:録音した音声データが、サーバー上にどれだけの期間残るか。1週間で消えるサービスと、削除操作をしない限り無期限に残るサービスでは、漏洩が起こりうる時間の長さがまるで違う。
- AI学習への利用:あなたの音声や会話内容が、そのサービスのAIモデルの精度向上のために使われるか。使われる場合、オプトアウト(利用を拒否する設定)ができるかも合わせて確認する。
- 削除ポリシー:データが自動で消えるのか、自分で申請して消すのかという運用の違い。自動削除は、退職者や異動者が削除を忘れるリスクを構造的に消せる。
料金や対応言語は、比較すれば数字ですぐ差が分かる。ところがこの3つの軸は、公式サイトのトップページには出てこない。プライバシーポリシーやヘルプセンターの奥まで見に行って、ようやく分かる情報だ。
各社の音声データの扱いを比較する(2026年8月時点)
実際に確認してみると、公開の仕方にかなりの差があることが分かる。保存期間まで明記しているサービスもあれば、削除は「請求すれば応じる」という受け身の書き方にとどまるサービスもある。なお表中のGDPR(EUのデータ保護規則)、HIPAA(米国の医療情報保護法)、APPI(日本の個人情報保護法)、CCPA(米国カリフォルニア州のプライバシー法)は、いずれも各国・地域のデータ保護に関する法令の略称だ。
| サービス | 保存期間 | AI学習への利用 | 削除の仕組み | 主な認証・準拠 |
|---|---|---|---|---|
| メモリス(自社) | AI処理完了後に即時自動削除(音声データは残らない) | ー | 自動(ユーザー操作不要) | ー |
| Notta | 公開情報に具体的な期間の記載なし | 標準プランは既定でAI学習に利用される場合があり、設定でオプトアウト可能。エンタープライズプランは学習に利用しないとヘルプセンターが説明(要確認) | 個別のデータはユーザー操作で削除 | ISO27001/SOC2 Type II/GDPR・APPI・CCPA対応 |
| PLAUD NOTE | ユーザーが保存先(ローカル/クラウド)と保存期間を設定できると公式ブログに記載。初期値は公開情報からは確認できず | 記載を確認できず(要確認) | ユーザーが手動削除。連携解除時の挙動は公開情報から確認できず | SOC2 Type II/HIPAA/GDPR準拠 |
| AutoMemo | 保存期間そのものの上限は公開情報から確認できず(ストレージ容量に上限はないとの情報はあるが、期間とは別の話) | 記載を確認できず(要確認) | ユーザーが削除操作(削除後は復元不可) | ISO27001認証 |
| LINE WORKS AiNote(旧CLOVA Note) | 無料プランは1年間保管。AI品質向上への同意データは提供日から原則2年間保管 | 同意(オプトイン)した音声のみ学習に利用 | 同意を解除しても、既に提供済みのデータは削除されない | ー |
| AI議事録取れる君 | プライバシーポリシーに具体的な期間の記載なし | 明記なし | 個人情報の訂正・削除は請求ベース | ー |
表にして初めて見える差もある。LINE WORKS AiNoteの無料プランは、文字起こし結果を含めて1年間保管される。長いように見えるが、これは意図的な設計だ。あとから会議内容を検索して振り返れるようにするための保管期間であり、AI議事録が「記録として残す」ことを前提にしたサービスであることの表れでもある。
一方でAutoMemoは、保存期間そのものの上限を公開情報から確認できなかった。ストレージ容量に制限がないという説明はあっても、それは「消えない」という意味ではなく、あくまで容量の話だ。期間の上限が確認できないという情報の少なさそのものが、導入前に問い合わせるべき理由になる。
Nottaはヘルプセンターの説明によれば、学習利用にオプトアウトの仕組みを用意している。裏を返せば、何も設定しなければ、あなたの音声の一部がほかのユーザーの認識精度向上に使われる可能性があるということでもある。エンタープライズプランでは学習利用が行われないとされているため、機密性の高い会議で使うなら、プランの選び方自体がセキュリティ対策になる。
AI議事録取れる君やPLAUD NOTEのように、保存期間や学習利用についてプライバシーポリシー・公開情報の記載が薄いサービスもある。記載がないことは、必ずしも問題があることを意味しない。ただし、確認したいときに規約を読んでも答えが見つからないという状態は、それ自体が導入判断を先延ばしにする理由になる。
メモリスは、処理が終わった音声を残さない
メモリスは、この3つの軸に対してシンプルな立場を取っている。録音を終えたあとにAIが処理し、処理が完了した時点で音声データを即時に自動削除する。ユーザーが削除ボタンを押す必要も、退職時に消し忘れる心配もない。
手元に残るのは、文字起こしと要約のテキストだけだ。誰が何を言ったかという音の記録そのものは、処理が終わった瞬間にサーバー上から消える設計になっている。あとから「あの音声を復元してほしい」と言われても、それはできない。できないことが、そのままセキュリティ上の強みになっている。
これは、録音するだけで会議も思いつきも作業メモもAIがテキスト化・要約する「AIボイスメモ」というメモリスの作り自体から来ている。会議中にその場で字幕を出すような処理はしていない。録音が終わってからAIに渡し、数分で要約が届く。音声データが扱われるのはこの間だけで、処理が終われば消える。常に音声を貯め込んで再利用する設計そのものを持たない。
都度録音の仕組みと音声データの扱いの関係は、常時マイクをオンにしておくタイプの端末と比べるとより分かりやすい。常時録音のプライバシー不安、都度録音なら小さくなるで詳しく説明した。スマホでの録音だけで完結させたい場合の選び方は議事録ツール スマホだけで完結|ボットなしで選ぶも参考になる。
参加者の同意は「毎回口頭」ではなく仕組みにする
データの保存期間や削除ポリシーをいくら厳密に管理しても、そもそも録音そのものへの同意が取れていなければ、情報漏洩以前の問題として信頼を損なう。ところが冒頭で触れた調査では、録音・文字起こしへの参加者同意を「毎回、事前に取っている」人はわずか22.7%だった。社内会議だけでなく、顧客との打ち合わせ(40.2%)や商談・営業会議(36.0%)でもAI議事録の利用ニーズは4割前後に達しており、同意が必要な場面は社内にとどまらない。詳しい調査結果はAI議事録の不安1位は「情報漏えい」42.8%、同意の徹底は22.7%止まりにまとめてある。
同意を「毎回、口頭で確認する」運用のままにしておくと、担当者の記憶と裁量に頼ることになり、うっかり抜け落ちる。招集メールや会議冒頭のひとことをテンプレート化しておけば、同意を個人の注意力ではなく仕組みの側に移せる。具体的な言い回しの例は録音許可の言い方・例文集にまとめてある。社外の相手が関わる会議ほど、このテンプレート化を優先する価値がある。
法人で導入する前のチェックリスト
保存期間、学習利用、削除ポリシー、同意の運用。この4点は、契約前のどこかで必ず確認することになる。順番を決めておくと、確認の抜け漏れを防げる。
- 保存期間を規約・ヘルプページで確認したか:数字が明記されていないサービスは、問い合わせて確認する
- AI学習への利用有無とオプトアウト設定を確認したか:既定でオンになっている場合、法人利用ではオフにできるプランを選ぶ
- 削除が自動か、申請ベースかを確認したか:申請ベースなら、退職・異動時の削除フローを社内規程として決めておく
- 同意の取得を仕組み化したか:カレンダー招待や会議冒頭のアナウンスをテンプレート化し、口頭確認だけに頼らない
- 社外が関わる会議のルールを先に整備したか:顧客・取引先が参加する会議は、社内会議より優先してルールを固める
料金や文字起こし精度の比較で候補を絞ったあとは、このチェックリストで最終確認をしてから契約するとよい。個人情報や機密情報を含む会議であれば、情報システム部門・法務部門への確認も忘れずに行いたい。
商談の録音を始める前に、確認する癖がついた
以前は、録音を始める前に確認していたのは相手の同意だけだった。「メモ用に録音していいですか」と一言添えれば、それで十分だと思っていた。
だが、それだけでは足りないと考えるようになった。データがどこに送られ、いつ消えるのかを自分の言葉で説明できて、初めて同意は意味を持つ。同意を取った時点で満足していたら、そこまでは考えが及ばなかった。
それ以来、新しいツールを試すときは、料金表より先にプライバシーポリシーとヘルプセンターを開くようになった。読んでも保存期間が書かれていないサービスに当たることも多い。そのときは、書かれていないという事実そのものを判断材料の一つとして扱っている。書いていないサービスを使わないと決めているわけではない。ただ、機密性の高い会議では選ばない、という線引きだけは持つようにしている。
まとめ|情報漏洩対策は、比較表の外にある
料金と精度で候補を絞り込むところまでは、多くの人が自然にやっている。差がつくのはその先で、保存期間・学習利用・削除ポリシーという3つの軸を、公式情報まで確認したかどうかだ。この3つは比較表の主役になることは少ないが、情報漏洩のリスクを実際に左右しているのはここになる。
メモリスは、AIが処理を終えた音声データを即時に自動削除する設計を選んでいる。声そのものを残さないという判断は、便利さを削っているように見えるかもしれない。それでも、消えたデータは漏れようがない。機密性の高い会議ほど、この単純な事実が効いてくる。
一般的な機能や料金まで含めて比較したい場合は【2026年版】AI議事録アプリおすすめ比較を、文字起こしの精度や対応形式で選びたい場合は文字起こしサービス比較を参照してほしい。まずは、次の会議を録音する前に、使っているツールのプライバシーポリシーを一度開いてみてほしい。書かれている内容と、書かれていない内容の両方が、判断材料になる。
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よくある質問
AI議事録の 情報漏洩リスクで、まず何を 確認すればいいですか?
料金や文字起こし精度より先に、保存期間(いつまで音声が残るか)、AI学習への利用有無(あなたの会話が別のユーザーの精度向上に使われないか)、削除ポリシー(自動で消えるか、自分で削除申請が必要か)の3点を確認してください。多くのサービスはヘルプセンターやプライバシーポリシーに記載があります。
メモリスは 録音した 音声データをどう 扱いますか?
録音を終えたあとにAIが処理し、処理が完了した時点で音声データを自動的に削除します。手元にもクラウドにも音声そのものは残らず、あとに残るのは文字起こしと要約のテキストだけです。
会議で 参加者から 録音の 同意を得る 必要は ありますか?
一般的には、録音する目的を一言伝えてから始めるほうが望ましいとされています。ただし就業規則や取引先との契約、業種によって扱いは変わるため、社外が関わる会議では法務・情報システム部門に確認しておくと安全です。