- ワークマンが商品撮影の遅延時のみ生成AIで代替、全撮影の置き換えではない
- アプリ通知画像の生成AI活用で開封率1.5倍の例も
- 勝ち筋は精度でなく供給の途切れをゼロにすること
ワークマンが画像生成AI「Gemini 2.5 Flash Image(NanoBanana)」と動画生成AI「Veo」を、商品ページの着用イメージ制作に使っているとITmedia NEWSが報じている。全国1000店舗超を社員500人以下で支える体制では、防水・防寒機能を伝えるための「雨天でのロケ」のようなシチュエーション撮影が、ロケ地選定からモデル・カメラマンのアサインまで重い負担になっていたという。導入は2025年。BigQueryなど既存のGoogle Cloud基盤があったことも後押しした。
注目すべきは、生成AIが人手の撮影を丸ごと置き換えたわけではないという点だ。同社のマーケティング戦略グループ・荻原勇太氏は「今でも人手による撮影は大量に行われている」と明言している。使われるのは、ロケの都合がつかずスケジュールが崩れそうなときのスポット的な代替に限られる。以前ならオフィス近辺での社員の“やっつけ撮影”で凌いでいた場面が、シチュエーションに沿った画像で補えるようになった、という位置づけだ。加えてアプリ通知に使う画像にも生成AIを使い、開封率が1.5倍になった例があるという。
会議の記録や資料作成のような日々の業務でも、この事例が示す構図はそのまま当てはまる。多くの現場がAI導入を「全部自動化できるか」で評価しがちだが、ワークマンの活用範囲は業務全体のごく一部、しかも「本来やりたかった手順が崩れたときの保険」に絞られている。生産性の議論では、AIを主役の作業者として組み込むより、既存の人手のワークフローの隙間——締め切りに間に合わない、担当者が捕まらない、素材が揃わない——を埋める役割で使う方が、投資対効果は早く出る。
この事例からもう一つ引き出せる見方がある。開封率1.5倍という数字は、生成AI画像そのものの説得力の高さよりも、コンテンツの供給が途切れなかったことの効果として読むべきだ。ロケが崩れて予定通り配信できなければ、その回の通知や商品ページは弱いコンテンツのまま、あるいは欠番のまま公開されていたはずである。生成AIが埋めたのは「クオリティの上限」ではなく「ゼロになる場面」であり、この違いは中小企業がAI活用を検討する際の優先順位に直結する。限られた予算で最初に手当てすべきは、看板コンテンツの質を磨くための生成AIではなく、業務が止まりかけたときに供給を切らさないための生成AIだ、という順番になる。会議の議事録作成や資料整理でも、担当者が不在で記録が抜け落ちる、締め切りに追われて要約が雑になる、といった「途切れる瞬間」をAIで埋める発想は同じ形で応用できる。
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