
- OpenAIが9月3日、新モデル「GPT-6 Astra」を発表、数日中に有料プラン全体へ提供
- パソコン操作は前モデルより速くなったが、ベンチマークでは1タスクにまだ約40分を要する
- 総合力の指標ではClaude Fable 5.1が上回る項目もあり、全項目で首位というわけではない
「Anything you can do on a computer, Astra can do for you. Fast.」(パソコンでできることは、すべてAstraが代わりにやってくれる。速く。)OpenAIは2026年9月3日(米国時間)、新モデル「GPT-6 Astra」を発表し、公式ページでこの一文を掲げた。だが「速く」が指す中身を数字で見ていくと、想像より地味な話になる。
GPT-6 Astraの目玉は、パソコン画面を直接操作する「computer use」(AIがマウスやキーボードの代わりに画面を見て操作する仕組み)の強化である。公式ページが挙げる例は、オンラインフォームへの入力、CRM(顧客管理システム)の顧客情報の更新、カレンダーの整理といった、地味だが手間のかかる作業だ。ほかにも、ネットで調べた内容の要約をメールや文書エディタに下書きする例も示されている。曖昧な指示を渡された場合は、文脈から判断できる部分は自分で補い、結果を左右しかねない判断だけをこちらに確認してくる設計になっているという。
では、その「速さ」はどれくらいのものか。OpenAIが公表した測定によれば、パソコン操作の性能を測るベンチマーク「OSWorld 2.0」で、前モデルのGPT-5.6 Solは1タスクあたり約75分かけて65.7%のスコアだったのに対し、GPT-6 Astraは約40分で72.6%を記録した。処理時間はおよそ半分近くに縮み、正答率も上がった。ただ、短縮されたとはいえ1タスクにまだ数十分かかる。エージェントに仕事を任せるとは、指示を出してすぐ結果が返ることではなく、しばらく待つことを意味している。
公式ページにはClaude・Geminiなど他社モデルとの比較表も載っているが、全項目でGPT-6 Astraが最上位というわけではない。専門家レベルの難問を集めた「Humanity's Last Exam」や、複数のベンチマークをまとめた総合指数「Artificial Analysis Intelligence Index」では、AnthropicのClaude Fable 5.1がGPT-6 Astraを上回る(いずれもOpenAI自身が測定・掲載した数値)。得意なのはパソコン操作やソフトウェア開発、サイバーセキュリティで、総合力の指標では他社が上回る領域も残っている。
提供は段階的である。9月3日時点では一部の組織に限定されているが、数日中にChatGPTのPlus・Pro・Business・Enterpriseの全ユーザーに広がり、OpenAIのAPIとAWS経由でも使えるようになる予定だ。利用料は既存の契約プランの範囲内に含まれ、それを超えて使う場合はクレジットを追加購入する。Enterpriseプランでは既定で無効になっており、管理者が有効化する必要がある。API利用の場合、標準料金は入力100万トークン(AIが処理する文字の単位)あたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルで、処理速度を最大2倍にする「Fastモード」を選ぶと料金も2倍になる。無料プランでの提供は、発表に記載がない。
まず言えるのは、最初に任せる仕事は、面倒で、結果を目で確認でき、失敗してもやり直せる作業から選ぶべきだということだ。フォーム入力やCRM更新、カレンダー整理がデモの筆頭に並んでいるのは、偶然ではないだろう。OpenAI自身、重大な判断が絡む場面では処理を止めて人の確認を挟む設計にしており、安全のためのチェックが正当な作業まで止めてしまうこともあると認めている。任せる範囲は、性能の数字より先に、間違えたときどれだけ簡単に元へ戻せるかで決めた方がいい。
もう一つ言えるのは、「速い」の単位が数十分である以上、働き方そのものが変わるということだ。エージェントの画面をその場で見ながら操作するのではなく、指示を出したらいったん別の仕事に移り、後で戻って結果を確認する形に近づく。詰まるのは操作方法ではなく、何を、どんな前提でやってほしいかを文字で渡せるかどうかになる。会議や打ち合わせで決まったことをエージェントに渡すにも、まずは文字になっている必要がある。録音しておけば、あとからAIが文字起こし・要約してくれるメモリス(AIボイスメモ)は、この材料を作る側の道具である。
GPT-6 Astraは、8月1日に数学の未解決問題を解いたとされる「Astra」(関連記事)、9月1日にサイバーセキュリティ能力が最高区分「Critical」に達した同モデル(関連記事)の延長線上にある。今回の一般提供で、その能力が仕事の現場に広がっていく段階に入った。OpenAIは公式Xでも同じ告知を投稿しており、国内ではImpress WatchやITmedia NEWSも今回の発表を報じている。




