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2026年09月12日 19:29

Genspark、資料生成AI「Gen-1 Slides」発表

執筆: Takumi(Memolith開発者)
メモリスメモリスによる要約
  • Gensparkが資料生成の専用AI「Gen-1 Slides」を発表
  • 入力トークン価格は汎用最上位級AIの約1/17を掲げる
  • 完遂・内容品質は汎用モデルが上回る場面も残る

プレゼン資料を作るAIサービス「Genspark AI Slides」を運営するGensparkが、2026年9月10日、資料生成に特化した自社モデル「Gen-1 Slides」を発表した。

同社はブログで、知識労働者向けに開発した後学習モデル群の第一弾に位置づけている。後学習とは、汎用の大規模言語モデルを土台に、特定の用途向けの訓練を追加で施す工程を指す。Gen-1 Slidesは、外部に公開されている土台モデル「MiniMax M3」を出発点に、インフラ企業Fireworks AIと共同で作られたという。

このモデルはすでにGenspark AI Slidesの標準モードで稼働しており、ユーザーが支払う料金は変わらないまま、AIを動かす裏側のコスト(トークン、AIが処理する文章の単位あたりの利用料)を下げる役割を担う。Gensparkの発表によれば、入力トークンの価格は100万トークンあたり0.30ドルで、汎用の最上位級AIモデルであるClaude Opus 5の同5ドルと比べて、約1/17に抑えられているという。完成したデッキ(スライド資料)単位で見た自社試算では、月1,000件のデッキを作るチームのコストが約4,200ドルから約440ドルに下がるとも説明している。ただしこれはトークン単価の比率とは別の指標であり、Genspark自身の運用データに基づく試算である点は留保が要る。

入力トークン単価の比較。Gen-1 Slides: 0.30ドル、Claude Opus 5: 5ドル。Genspark発表の入力トークン単価。完成デッキ単位のコストとは別の指標

品質面では、内部の実タスク200件(データ保持に同意した利用者の匿名化された依頼)と外部の公開ベンチマーク2種を合わせた9つの評価のうち、Gen-1 Slidesが8つで1位、残る1つも上位2位に入った。平均順位は1.11で、他社モデルのKimi K3(2.44)、Claude Opus 5(2.56)より高い。同一のツール・手順を使う条件をそろえた比較で、Gen-1 SlidesとClaude Opus 5を含む5モデルに同じ課題を実行させた結果だという。一方で自社の実タスク200件に限ると、Claude Opus 5がタスクの完遂度とコンテンツの質では首位に立っており、Gen-1 Slidesが上回るのは総合スコアと見た目のデザイン評価だ。評価の判定役には別の既存モデルをベースにした自動採点役を使っており、この採点役はGen-1 Slidesの訓練にも報酬として使われたため、内部評価のスコアは訓練から独立していない。公開ベンチマーク2種の採点役はこの訓練に関与していない、とGensparkは注記している。

資料作成は、会議のたたき台からクライアント向けの提案書まで、業務の中でも時間を取られやすい作業の一つだ。そこに特化型のAIが入り込み、しかもコストの内訳まで公開して汎用モデルと比べて見せたことは、AIをどう使い分けるかという判断が、単に「どのAIが賢いか」ではなく「どの作業にどのAIを充てるか」という段階に移りつつあることを示している。会議の議事録を素材にスライドを作る場面では、録音してメモリス(AIボイスメモ)に渡しておくと、録音後にAIが作る文字起こしと要約が、そのままスライド生成AIへの入力になる。

この発表が投げかけているのは、汎用の最上位級AIをそのまま使い続けるべきか、それとも業務ごとに専用モデルへ切り替えるべきか、という判断の切り替え時期の問題である。Gen-1 Slidesが示した約1/17という価格差は、一つの作業を何度も反復させる用途では無視できない規模になる。スライド生成のようなエージェント型の処理は、下書き→修正→再生成を何度も繰り返すため、トークン単価の差がそのまま反復回数分だけ積み上がっていく。

とはいえ、この判断を「安いモデルに乗り換えればよい」という単純な話にしてしまうと見誤る。Gensparkの評価自体が示すとおり、Gen-1 Slidesはタスクの完遂度とコンテンツの質では汎用モデルに譲る場面が残っており、しかも評価の採点役の一部は訓練に使われた同じ仕組みだ。つまり公開された数字は、性能が完全に追いついた証拠ではなく、特定の作業(見た目の整ったデッキを大量に作る)に照準を絞った結果、その作業だけでコストと品質のバランスを取り直せた、という限定された成果として読む方が正確だ。

それでも、この動き自体は業務特化型モデルの実用段階が近づいていることの根拠になる。Gensparkはピーク時に1日12万件のデッキを生成しており、プロダクトマネージャーとデザイナーが4千ページ超を人手で評価し、157万件の本番タスクから評価データを得ている。これは汎用モデルの開発元が持ちにくい、特定業務に閉じた大量の実運用データであり、評価やモデル改善の方向性を定める材料になる。資料作成に限らず、議事録や提案書のように反復回数が多く成果物の形式が定型的な業務ほど、今後は汎用モデルと専用モデルの使い分けが、コストと品質の両面で現実的な選択肢として浮上してくるはずだ。AIに一つの作業を最後まで任せる設計では、生成をやり直すたびにトークン単価の差が積み上がるため、完成物1件あたりのコストで比較しない限り、どちらが実際に安いかは見えてこない。

Gensparkの発表内容は公式ブログで確認できる。

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