
- 富士通は約10万ライセンスを導入し活用率90%以上を維持と紹介
- 7,500から3万、10万へ段階的に拡大し、研修・表彰・情報交換で定着を図った
- 効果測定は後追いで、使われ方を記録に残す設計が定着の鍵
富士通は、全従業員相当の約10万ライセンスのMicrosoft 365 Copilotを導入しました。Microsoftが公開した顧客事例によると、2026年6月現在で活用率は90%以上を維持しています。この数値は富士通側の発言に基づくもので、Microsoftが自社の事例として紹介しているものです。
7,500ライセンスから始めた段階導入
経緯は段階的です。富士通は2025年7月に7,500ライセンスで、各部門を対象とした集中トライアルを始めました。2026年1月にはライセンスを3万まで拡大し、10万ライセンスの本格導入は2026年4月でした。
トライアル中には、ハンズオンセミナーやトレーニング動画を作り、習熟度に応じて学べる環境を用意しています。社内DX活動「フジトラ」のネットワークを活用して、部門横断の「全社AI実践イニシアティブ」も立ち上げました。優れた活用例を表彰する「AI & DDM Award」と「鉄板エージェント コンテスト」を定期的に開き、フジトラの中核メンバーによる情報交換会など、ヘビーユーザーが伸びる機会も設けています。
社内サービスデスクでは、AIエージェントが一次対応や判定を担い、対象となる年間約30万件の問い合わせプロセスのうち約75%が自動化されたとのことです。
読者の職場にとっての意味
ライセンスを配ったのに誰も開かない、という状況は珍しくありません。富士通の例で注目すべきは、ツールそのものより、使い方を学ぶ場と、うまくいった使い方を見せ合う場を先に用意している点です。
もちろん限界もあります。顧客環境やセキュリティ上の制約から、Copilotを使えない社員も存在すると、同事例の中で語られています。90%は全員が使えている数字ではなく、使える環境にある人の中での利用率と読むのが安全でしょう。
自社で真似るなら何を決めるか
結論から言えば、全員に一斉配布する前に、少人数で試す期間と、使い方を共有する場を決めておくべきです。理由は、AI活用が個人の工夫に依存しやすいからです。会議のあとに要点をまとめる、議事の抜けを確認する、といった使い方は、見せてもらえば誰でも真似できますが、自力で思いつく人は多くありません。富士通は表彰や情報交換会で、その工夫を社内に流通させています。小さな職場でも、週に一度、使った場面を一つ共有するだけで同じ効果を狙えます。
もう一つの結論は、効果の測定は後から整えてもよいが、使われ方が分かる記録は最初から残すべきだ、ということです。富士通は初期はKPI(成果を測るための指標)を精緻に定めず活用を進め、経営層の後押しを受けて、まず迅速に導入し、活用しながら価値を見極める方針を取りました。その後、因果分析技術でAI導入効果と財務成果の間に中間因子を置き、それをKPIとして効果を可視化する試みを始めています。ただしこちらはまだ試みの段階です。後から測るには、何がどう使われたかの材料が要ります。個人の時短が組織の成果につながらない問題は、パーソル総合研究所の調査でも取り上げました。行動データを分析したイトーキと松尾研究所の事例も、測る材料を先に持つ意味を示しています。
会議や打ち合わせは、その材料の代表です。メモリスはAIボイスメモとして、録音した音声を録音後にAIが文字起こし・要約します。決定事項や相談内容が文章で残っていれば、Copilotのような道具に渡す元データにもなり、あとから使い方を振り返る手がかりにもなります。
富士通の数字は、導入の早さではなく、学びと共有の仕組みを同時に走らせた結果として読むのが妥当です。




