
- 会議が多い日は翌日のコンディションが低下
- 中断なしの60分以上の作業で88%が翌日向上
- 結果はイトーキ1社のもので一般化には限界
イトーキと松尾研究所は2026年10月2日、オフィスワーカー854名の日々の行動データをAIで分析した研究結果を発表しました。会議、メール・チャット、オフィス内の移動など70種類の行動を取り上げ、生産性向上の因果関係を探る「データ駆動型生産性推定モデル」を構築したといいます。詳細はイトーキのリリースで公開されています。
分かったこと
分析の中核は、時系列の因果探索という手法です。「今日の行動が翌日の状態にどう効くか」を従業員ごとの日次データから推定し、職種ごとに重ね合わせて、多くの人に共通する関係だけを取り出します。従来の相関分析は「会議が多い日は調子が悪い」という同じ日の関係までしか分からなかった、というのがイトーキの説明です。
結果として、会議の数が多かった日は、設計・開発・企画、営業・サービス、管理の3職種すべてで翌日の心のコンディション低下が確認されました。会議の総時間より、会議がいくつ入っているかの影響が強く出たとされています。一方、会議などに中断されず60分以上集中して作業できた日は、全職種で88%の従業員が翌日のコンディション向上を示しました。
メール・チャットは、発信量より受信量が影響していました。特に営業・サービス職では、受信が多い日に組織内の人間関係や体のコンディションなど複数の低下が見られています。ただし受信による低下が明記されているのは主にこの職種で、全職種に当てはまるとは書かれていません。自分からオンラインで発信する行動は、組織内の人間関係のコンディション向上に影響していました。返信の速さなどは、組織全体ではアウトプットに一貫した因果が見られませんでした。これは返信が速いほど生産性が高いとは言い切れない、という趣旨で、効果がないという断定ではありません。
読者にとっての意味
予定表を見て「1時間の会議が1本」と、同じ合計時間を3本に分けた会議を同じ負荷と数えてきたなら、この結果はその見積もりに疑問を投げかけます。数えるべきは時間より、作業が分断される回数かもしれません。
データ取得は2025年12月1日から12月31日で、対象はイトーキ本社オフィスの従業員だけです。イトーキ自身も、モデルは他企業に応用できるが示した結果は自社のものだと断っています。自分の職場にそのまま当てはまる保証はありません。
会議の「数」を減らすという提案
この調査から実行できる手立てを一つ選ぶなら、会議の時間を削ることより、会議の数を減らして予定をまとめることです。
根拠は、今回の分析で時間より数のほうが影響が強く出た点にあります。会議が一つ入るたびに、準備と切り替えが発生します。時間が同じでも、3本に分かれていれば切り替えは3回です。まとまった60分以上の作業時間が、翌日の状態の向上と結びついていたことを考え合わせると、予定を詰めて空きを一続きにする設計に筋が通ります。
反論はありえます。会議を1本にまとめれば、1本あたりが長くなり、疲れるのではないか。この調査は会議の総時間より数の影響が強いと示しただけで、長い会議が負担にならないとまでは言っていません。まとめるときは議題の絞り込みも併せて行う必要があります。
もう一つの限界は、因果探索が1社・1か月のデータに基づく点です。それでも、手元で試すコストは小さいと考えます。1週間だけ会議を特定の曜日や時間帯に寄せ、作業が途切れない日を作り、翌日の調子を自分で見比べる。この程度なら外れても損失はわずかで、当たれば得られるものは大きい。調査が一般化できないことは、小さく試す理由にこそなれ、見送る理由にはなりません。
録音をAIボイスメモ「メモリス」に渡して、録音後に文字起こしと要約を作る使い方は、会議の数が減らせない場面で役立ちます。メモ取りに手を取られず議論に集中でき、会議後の整理も短くできるためです。
関連する話題として、AI活用の効果が個人の時短にとどまり組織の成果につながりにくい問題は、パーソル総合研究所の調査でも取り上げています。




