
- AI活用の成否は出力量でなく渡す前提情報の質で決まる
- 個人の小さな工夫が組織全体の効率化に広がった実例
- まず反復業務ひとつから記録を整えて検証するのが近道
AIを導入したのに、思ったほど仕事が楽にならない。
そう感じるビジネスパーソンは少なくない。
米マイクロソフトのAzure Functionsチームでシニアソフトウェアエンジニアを務める牛尾剛氏が、約3年間のAI活用の試行錯誤を語った記事をビジネス+ITが報じている。
きっかけは業務上の切実な課題だったという。
世界中のクラウドサービスに障害が起きると、専用のクエリ言語を駆使した複雑な調査が必要な「インシデント」対応が届く。
1件あたり1〜2時間、多い日は4〜5件が重なり、担当者の1日がそれだけで終わってしまう状況だった。
牛尾氏は、インシデントのデータをAIに読み込ませて分析させ、結果をコピー&ペーストする仕組みを個人の工夫として作った。
会社の正式なミッションではなく趣味の延長で始めたこの取り組みが、後にマイクロソフト社内でのAI活用推進のきっかけとなり、牛尾氏自身も本格的なAI担当へと異動した。
その過程で氏は「生産性10倍」を体感したといい、詳しい経緯は著書『部下としてのAI 世界一流エンジニアの進化術』にまとめられている。
この事例が示す意味は、会議や作業記録の扱い方にそのまま応用できる。
AIに何かを分析・要約させるとき、成果を左右するのはAIそのものの性能ではなく、渡す情報の作り込みだからだ。
生産性が上がる人と、出力ばかり増えて成果に結びつかない人の分かれ目は、この一点に集約される。
AIの出力量ではなく、AIに渡す前提情報の質が成果を分ける。
牛尾氏のケースでは、複雑なクエリの結果という「そのままでは扱いにくいデータ」を、AIが処理できる形に整えて渡す工夫があったからこそ、10分でコーヒーを飲む余裕が生まれた。
会議の音声や思いつきのメモも同じで、話しっぱなし・書きっぱなしのままではAIの処理対象にすらならない。
録音を文字起こしし、要約という扱いやすい形に変換しておく習慣を先に整えることが、後段のAI活用の効果を決める前提条件になる。
もう一つ、個人の小さな工夫が組織全体の生産性を動かすという点も見逃せない。
牛尾氏の自動化ツールは会社の正式な指示ではなく、担当者個人が自分の負担を減らすために始めたものだった。
それが結果的に部署異動という形で組織に取り込まれた経緯は、AI活用の広がり方が「全社導入の決定が先」ではなく「現場の小さな検証が先」であることを裏づけている。
全社的なルール整備やツール選定の完了を待つより、自分が繰り返し行っている業務のひとつ、たとえば毎回発生する報告作業や定例の記録整理から、AIに渡す情報の形を先に整えて検証を始めるほうが、結果に近づく道筋になる。
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