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2026年08月19日 12:30

タイピング数の警告に見るAI時代の生産性指標

執筆: Takumi(Memolith開発者)
メモリスメモリスによる要約
  • GMOのタイピング数管理がAI利用と衝突と報道
  • 打鍵数はAI時代の生産性を測れない
  • 録音・会話ログなど成果に近い記録で代替すべき

GMOインターネットグループの在宅勤務者向け稼働管理で、パソコンのタイピング数を見て働きぶりを判断しようとする運用が、社内に不満を生んでいるとITmediaエンタープライズが報じた

記事によれば、AIにコードや文章を生成させる時間は、画面上ではキーボードをほとんど叩かない時間になる。何も入力していないように見える瞬間ほど、実は思考を仕事に振り向けている場合があるということだ。それでも打鍵数という古い尺度が稼働の物差しとして残っているせいで、まじめに働いている人ほど「サボっている」と誤解されかねない構造に、当事者が切り込む内容だった。

この歪みは、GMOという一社の管理手法の問題にとどまらない。AIが下書きや要約を肩代わりする働き方が広がるほど、キーボード操作量・画面滞在時間・ログイン時間といった「作業量」を模した指標は、実際の成果からどんどん外れていく。会議の議事録も、営業の商談メモも、AIに任せる工程が増えれば増えるほど、人間の手作業は減るのに、その分だけ生産性が落ちたように数値上は見えてしまう。稼働管理にこの手の指標を使っている職場では、AIを積極的に使う人ほど不利に評価されるという逆転が、すでに起き始めているとみてよい。

打鍵数のような作業量の代理指標は、AI時代の生産性測定からいったん外すべきだ。 理由は単純で、AIが担う工程が増えるほど、人間の作業量と成果の相関が薄れていくからだ。相関が崩れた指標を評価に使い続ければ、評価が実態から乖離するだけでなく、AIを使うことへのためらいという副作用まで生む。GMOの事例が示しているのは、AI活用を推奨しながら、評価の物差しだけを更新し忘れた組織の矛盾である。

代わりに測るべきは、会話・思考の記録そのものだ。会議での発言量、商談での質問の数、打ち合わせの決定事項の数といった、記録に残る「成果に近い行動」を数値化する方が、打鍵数よりよほど実態に近い。この記録を人力で残そうとすると、結局は議事録作成という別の作業負担が発生してしまう。だからこそ、会議や商談を録音してAIに文字起こし・要約させておき、後から発言量や決定事項の件数を機械的に拾えるようにしておく運用が現実的な代替策になる。ボイスメモとして日々の打ち合わせを録音しておけば、稼働管理者は打鍵数を見なくても、誰が何を決め、どれだけ議論に貢献したかを記録から確認できる。

もう一つの論点は、評価する側の説明責任だ。AI活用を推奨する会社ほど、評価指標の更新を後回しにしやすい。 新しい働き方を導入する号令はかけやすいが、それに合わせて評価制度を作り直す作業は地味で後回しにされがちだからだ。だが指標を放置したまま「AIを使え」と言い続ければ、現場は評価が落ちない範囲でしかAIを使わなくなる。号令と評価基準を同時に更新しない限り、AI活用は掛け声で終わる。

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