
- メタCTOが社内Q&Aで、AIの生産性向上分は休暇でなく製品開発に使うべきと発言したと判明
- 廃止済み休暇制度の復活を求めた社員には、その話を持ち出すのはやめてほしい、ばかげた発想だと一蹴したという
- 組織の号令がない働き手は、浮いた時間の使い道をあらかじめ自分で決めておく必要がある
「会議が早く終わったから、今日はもう仕事を切り上げていいですか」——AIのおかげで議事録作成の手間が数分に縮んだ人なら、一度は頭をよぎったことがある問いかもしれない。メタの最高技術責任者(CTO)アンドリュー・ボズワース氏は、これに近い質問を社内で実際に受け、はっきり退けていた。
Business Insiderが8月7日(現地時間)に報じたところによると、ボズワース氏は7月上旬の社内Q&Aで、ある社員からAIによる生産性向上分を、廃止済みの特別休暇制度「Meta Days」の復活という形で休暇に回せないかと尋ねられた。ボズワース氏は、その時間はユーザー向けの製品をもっと多く、もっと面白くすることに使ってほしい、自分自身も浮いた1時間はそこに注ぎ込んでいると答えた。さらに、Meta Daysの話を持ち出すのはもうやめてほしい、ばかげた発想だと切り捨て、上司と話す機会のたびに休みを増やせないか聞き続けたらキャリア戦略としてどう映るか、親に聞いてみるといいとまで言い放ったという。のちに、意図せず厳しく当たってしまった、あの質問自体は半分冗談だったのだろうと釈明したというが、メタは公式コメントを出していない。なお同社は年4週間の休暇と祝日に加え、Meta Daysの代わりに自由に使える「選択日」を2日設けている。
議事録作成にかかる時間をAIが肩代わりするようになったとき、浮いた時間の行き先を誰が決めるかは、メタの社員だけの話ではない。岡山市が自動文字起こしシステムを2019年6月に導入した際は、庁内で年間約6,000時間を要していた会議録作成の4割減を見込み、生まれる時間を「より重要な業務」に回すとしていた。組織に属していれば、浮いた時間の使い道はたいてい本人ではなく組織の方針が決める。
ボズワース氏の発言を「働かせすぎ」批判として消費するだけでは惜しい。時間の効率化と成果への再投資をセットで語ること自体は、経営者の発言として筋が通っている。問題は、その再投資先を選ぶ権限が誰の手にあるかだ。メタの社員はCTOの号令に従うしかないが、会議の録音をAIに渡すだけで議事録が届く働き方をしているフリーランスや個人事業主に、号令を出す上司はいない。浮いた時間は丸ごと自分の裁量になる。だからこそ、次の会議の準備に充てるのか、請求書や見積もりの整理に回すのか、その日はもう仕事を切り上げるのか——あらかじめ自分で決めておいた方がいい。決めずにいれば、結局は目の前のタスクが埋める。ボズワース氏が社員に強いた選択を、誰の号令もないまま自分自身に無意識に強いることになるからだ。




