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2026年09月07日 13:25

AIで仕事は速くなるが単価は上がらず、ITフリーランス調査

執筆: Takumi(Memolith開発者)
メモリスメモリスによる要約
  • AI利用者の63.7%が仕事の速さを実感も、255人中で単価が上がったのは4.7%のみ
  • 値下げ圧力を受けた人は10.2%にとどまり、単価を上げる打ち手が「特にない」との回答が最多
  • 速さを成果として可視化できるかどうかが単価差を分けている

本業としてIT案件を受注するフリーランス255人を対象にした「AI時代のITフリーランス『効率化と報酬のギャップ』調査」の結果が公開された。AIを業務で使っている135人のうち86人(63.7%)が「作業スピードやこなせる仕事量が増えた」と回答した一方、255人全体で見ると月額単価が上がったのは12人(4.7%)にとどまったと、フリーランスジョブが2026年に実施した調査で報告している。

速さの実感と単価上昇の差。速くなったと回答: 63.7%、単価が上がった: 4.7%。速さはAI利用者135人ベース、単価は回答者255人全体ベース

母数は違う。速さの実感を聞いたのはAI利用者135人ベース、単価の変化を聞いたのは回答者255人全体ベースだ。それでも並べて意味があるのは、255人のうち221人(86.7%)が「横ばい」、12人(4.7%)が「上がった」で、合わせて233人(91.4%)が単価を維持以上に保っている一方、下がった人は8.6%にとどまるという構図があるからだ。AIの活用状況別では、使っていない人の下落率が11.7%なのに対し、業務効率化に使う人は6.7%、AIを組み込んだ開発を手がける「作る側」は0%(回答者15名のため参考値)。速さそのものは単価を守る材料にはなっているが、押し上げる材料にはなっていない。

会議やメモを録音してAIに任せる働き方をする読者にとって、この数字は他人事ではない。使う人が増えるほど、「速くなったこと」自体はもう差別化にならなくなる。会議の記録をメモリス(AIボイスメモ)のようなツールに渡して数分で文字起こし・要約を受け取れるようになっても、その時間短縮を相手にどう見せるかまで考えなければ、評価には結びつきにくいということだ。

この調査で見過ごしにくいのは、単価が上がらない理由がクライアント側の値下げ圧力ではないという点だ。AIで作業が速く終わることを理由に値下げ・据え置きを求められた経験がある人は255人中10.2%にとどまる。値下げ交渉が起きているわけではないのに、単価が据え置かれているのなら、原因は発注側の圧力ではなく、フリーランス側の値付けの基準が変わっていないことにある。単価を上げる打ち手を聞いた設問で最も多かった回答が「特にない・わからない」(31.0%)だったことも、この見立てを裏付ける。

反証に見えるデータもある。AIを組み込んだ開発などを手がける「作る側」の推定平均月額単価は78.0万円で、AIを使う側との差は約24万円(いずれも回答者15名のため参考値)。速さではなく単価が上がっている例が実在するように見える。ただし作る側が請求しているのは「速さ」ではなく、AIを組み込んだ成果物という、以前は存在しなかった納品物そのものだ。速さを時間短縮のまま抱えているか、新しい成果物として組み替えているかの違いであり、単価に跳ね返るのは時間短縮そのものではなく、その時間で相手に何を見せられるかだという点だ。

だとすれば、AI利用者ベースで63.7%が「速くなった」と答えながら、255人中12人(4.7%)しか単価が上がっていないという差は、速さを請求書の項目に翻訳する仕組みがまだ無いことの表れだと読める。時間単価や成果物単位の契約をそのまま使っている限り、AIによる時間短縮はフリーランス自身の可処分時間を増やすだけで、クライアントへの請求根拠には変換されない。単価を上げたい側がまずやるべきなのは、空いた時間で仕事量をこなすことではなく、その時間を使って対応範囲を広げるか、成果物の質を上げるか、いずれにせよ発注側から見える形に組み替えることだ。それをしない限り、AIを使うフリーランスが増えるほど、速さの価値は市場全体で目減りしていく可能性が高い。

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