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2026年08月21日 19:30

エイベックス松浦会長「AIで仕事、逆に増えた」

執筆: Takumi(Memolith開発者)
メモリスメモリスによる要約
  • 松浦会長がnote記事作成でAIと数十回やりとりし疲弊したとX投稿
  • 原因は対話中に次々浮かぶ新アイデアで案件が並行増加すること
  • 負荷を減らすには入力を区切る設計が要る

エイベックス代表取締役会長の松浦勝人氏が8月21日、自身のXアカウント(@maxmatsuuratwit)で「AIで仕事が楽になると思ってたけど、真逆でした」と投稿した。

きっかけは、松浦氏が8月13日から始めたnoteの連載「松浦勝人の人生論」だ。本人がXで明かしたところによると、松浦氏の指示を受けてAIがnoteのアカウントを作り、1本目の記事も自動投稿したという。「僕がやったのは、パスワードを入力したことくらい」。始めてから1週間で4本の記事が公開され、フォロワーは2万人、note上の高評価ボタンである「スキ」の数は5万を超えた。「中学生の頃、松浦さんの貸しレコード店に入り浸っていた」という読者の投稿を見つけたことも、本人にとって印象的な出来事だったようだ。

翌21日の投稿では、松浦氏はAI活用の負担についても明かした。noteの記事はたたき台を作ったあと、AIと数十回のやりとりを重ねて仕上げているが、そのやりとりの最中に「別のアイデア」が次々に浮かび、対応すべき案件そのものが増えていくのだという。「たくさんの案件を平行にこなしていくのはかなり疲れます」と松浦氏は明かした(ITmediaが報じている)。人間の作業速度を上回るペースでAIが応答してくるため、案件ごとに頭を切り替え続ける必要があったという。「休むという概念がなくなっていた僕は、ほぼほぼAIから離れられなくなりました。休憩を取るというのが大切なことが分かりましたが、休憩を取ってる間も頭の中はぐるぐる回ってます」とも振り返っている。

心理学には「選択のパラドックス」と呼ばれる考え方がある。選べる選択肢が増えるほど、人は満足するどころか、比較検討にかかる労力と決断への迷いが増えて疲弊するという指摘だ。松浦氏が味わった疲労は、この構造がAIとの対話という形で表に出た一例と見ることができる。

生成AIは、一つの応答で答えを一つに絞り込まない設計になっていることが多い。指示を出すたびに、追加の提案や言い換えを添えて返してくるのが標準的な挙動だ。使い手がどれだけ熟練していても、AIが自発的に持ち出す「別のアイデア」を検討するかどうかの判断は、そのつど人間の側に返ってくる。

ここで一見もっともに見えるのは、松浦氏の使い方が非効率だった、プロンプトの与え方が悪かった、という受け止め方である。やりとりの回数を絞れば疲労は防げたはずだ、という見立てにも一理ある。

しかしこの説明は、対話型AIの性質そのものを見落としている。負荷が増えたのは操作ミスではなく、対話を続ける限り判断の機会も比例して増えるという、対話型AIに共通する構造の帰結である。

対話を終わらせる合図は、外から与えられない限り自然には訪れない。人間同士の会話であれば「そろそろこの辺で」という空気や相手の一言が区切りになるが、AIとの対話にその役目を果たす相手はいない。区切りを作る責任は、常に使う側の設計に委ねられている。

具体的には、AIに何を渡すかより「いつ渡し切るか」を先に決めておく設計が要る。たたき台ができた時点で一旦対話を打ち切り、そこで浮かんだ追加の提案は次の作業回に持ち越す、といった運用が一例になる。松浦氏のケースは、たたき台の完成後も対話を継続し、その都度AIの提案を吟味する運用だった。判断のタイミングを常時オープンにする使い方であり、疲労が蓄積しやすい構造だったといえる。

対照的に、入力を録音というひとまとまりの塊で区切り、そのあとにまとめて要約を受け取る設計であれば、判断が求められるのは要約を受け取った一回だけになる。AIボイスメモのメモリスが採用しているのはこちらの形で、録音を終えてからAIが処理し、数分後に文字起こしと要約が仕上がる流れになっている。会議の合間に逐次AIとやりとりする必要がなく、判断の機会を録音後の一点に集約できる点は、松浦氏が明かした疲労の構造と対になっている。

AI活用で仕事を楽にしたいなら、対話を無限に続けられる状態そのものを、意図的にどこかで区切る必要がある。

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