
- 松浦会長がnote記事作成でAIと数十回やりとりし疲弊したとX投稿
- 原因は対話中に次々浮かぶ新アイデアで案件が並行増加すること
- 負荷を減らすには入力を区切る設計が要る
エイベックスの松浦勝人会長が8月21日、自身のXアカウントで「AIで仕事が楽になると思ってたけど、真逆でした」と投稿した。
ITmediaの報道によると、松浦会長は自身の経験を綴るnoteの連載記事をほぼAIで作成している。
たたき台を作ったあと、AIと数十回やりとりを重ねる過程で「別のアイデア」が次々に湧き、対応すべき案件そのものが増えていくという。
「たくさんの案件を平行にこなしていくのはかなり疲れます」と松浦会長は明かした。
人間の作業速度を上回るペースでAIが応答してくるため、案件ごとに頭を切り替え続ける必要があったとしている。
休む発想自体が消え、休憩中も頭の中がAIとのやりとりで回り続けていたとも振り返っている。
この体験は、AI導入がそのまま生産性向上に直結するわけではないという、多くの職場が薄々気づいている事実を裏付けている。
AIは指示すれば指示するほど選択肢を返してくる。
選択肢が増えれば検討の手間も増える。
「楽になるはず」という期待と、実際に手元で起きることのあいだには、この構造的なずれが挟まっている。
ここで一見もっともに見えるのは、松浦会長の使い方が非効率だった、プロンプトの与え方が悪かった、という受け止めである。
やりとりの回数を絞れば疲労は防げたはずだ、という見立てにも一理ある。
しかしこの説明は、対話型AIの性質そのものを見落としている。
生成AIは一度の応答で答えを一つに絞り込まない設計になっている場合が多く、追加の提案や言い換えを添えて返す挙動が標準的な振る舞いだからである。
使い手が熟練していても、AIが自発的に持ち出す「別のアイデア」を検討するかどうかの判断は、結局そのつど人間に返ってくる。
つまり負荷が増えたのは操作ミスではなく、対話を続ける限り判断の機会も比例して増えるという、対話型AIに共通する構造の帰結である。
ここから引き出せる論点は、AIに何を渡すかより、いつ渡し切るかという設計にある。
松浦会長のケースは、たたき台の完成後も対話を継続し、その都度AIの提案を吟味する運用だった。
これは判断のタイミングを常時オープンにする使い方であり、疲労が蓄積しやすい。
対照的に、入力を録音というひとまとまりの塊で区切り、そのあとにまとめて要約を受け取る設計であれば、判断が求められるのは要約を受け取った一回だけになる。
AIボイスメモのメモリスが採用しているのはこちらの形で、録音を終えてからAIが処理し、数分後に文字起こしと要約が仕上がる流れになっている。
会議の合間に逐次AIとやりとりする必要がなく、判断の機会を録音後の一点に集約できる点は、松浦会長が明かした疲労の構造と対になっている。
AI活用で仕事を楽にしたいなら、対話を無限に続けられる状態そのものを、意図的にどこかで区切る必要がある。
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