- 牛尾剛氏がissue対応・PR管理をAIに委任する働き方を解説
- 手順を明文化して渡す発想は会議記録の整理にも転用できる
- 出力が増えるほど人間側の確認作業がボトルネックになる
米マイクロソフトの現役エンジニアである牛尾剛氏が、著書『部下としてのAI 世界一流エンジニアの進化術』の抜粋を文春オンラインで公開した。
内容は具体的である。
ソフトウェア開発者同士がコードや作業内容を共有・管理するサービスであるGitHubの「issue」(ソフトウェアの不具合報告や新機能の要望を登録しておく仕組み)への対応を、自作のコマンド一つでAIに任せているという。
これまでなら牛尾氏自身が要望を読み、関係する複数のコードを調べ、修正方針を考え、テストして文書を更新するという工程を一人でこなしていた。
いまはコマンドを打つだけで、AIが調査から検討結果の整理までを終え、牛尾氏は「良さそうだ」と判断するだけで済むという。
実装やテスト、動作確認の記録づくりまであらかじめ決めた手順をAIに覚えさせて自動化し、さらに複数のプルリクエスト(コードの変更をまとめて提出する単位。PR)の状況を巡回して報告させる仕組みも作った。
結果、周囲から「一日に4つもPRを作ってしまい、レビューする側がパンクする」と言われるほど生産量が増えたという。
この記事が示しているのは、AI活用の効果が「何を聞くか」ではなく「何を委任する仕組みを作るか」で決まるという構造である。
会議の議事録づくりや日々のメモ整理も、実は同じ構造を持つ反復作業だ。
録音を要約させる、要点を決まったフォーマットで抜き出させる、といった手順を一度組んでおけば、毎回考え直す必要がなくなる。
牛尾氏の事例から読者の仕事に持ち帰れる論点は二つある。
まず、AI活用を「都度の質問」から「定型ワークフローの委任」へ移すべきだ。牛尾氏の生産性向上は、AIに一問一答で聞いたからではなく、issue対応やPR巡回という反復業務の手順そのものをコマンド化して渡したことで生まれている。会議の記録なら、「録音を渡す」「決定事項と担当者を抜き出す」「関係者に共有する」という一連の流れを毎回同じ形で任せられるようにしておくことが、単発の要約依頼より効く。
次に、出力が増えた分だけ確認作業がボトルネックに移ることを先に見込んでおくべきだ。牛尾氏の職場では生産量が上がった結果、「レビューする側がパンクする」という新しい問題が起きた。会議の記録でも、AIが要約を素早く出せるようになるほど、その内容を誰がどう確認するかが手薄になりやすい。決定事項だけを先に抜き出す、確認すべき項目をあらかじめ決めておく、といった形で出力を絞り込んでおけば、増えた分をそのまま処理しきれる。
AIに何を聞くかより、何を任せる仕組みを組むかで差がつく段階に入っている。会議や日々のメモという身近な反復作業から、その仕組みづくりを試す価値がある。




