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2026年08月23日 07:05

DeepMind出身AI「同僚」論文再現で好成績

執筆: Takumi(Memolith開発者)
メモリスメモリスによる要約
  • DeepMind出身者創業のInherent、AI「Faraday」が論文再現で好成績と発表
  • 27Bの小型モデルで大規模モデルを上回ったと主張、第三者検証はまだ無い
  • AIが結果だけでなく判断の過程まで報告する設計は、知識労働の代行モデルとして注目に値する

ロンドンのAIラボInherentが、AIエージェント「Faraday」の性能を巡る発表を行った。

Inherentは英Google DeepMindの出身者らが創業したスタートアップで、5000万ドルのシード資金を調達したばかりだ。同社によれば、Faradayは既に発表された科学論文の結果を、答えを教えられない状態で独立して再現するタスクにおいて、AnthropicのClaude Opus 4.8やOpenAIのGPT-5.5という、より大規模なモデルを上回ったという。詳細はInherentの公式研究ページで公開されている。

論文の追試は、新たに大学院生が研究を始める際の定番の訓練課題でもある。Inherentの共同創業者でチーフサイエンティストのEdward Hughes氏は、重要なのは追試に勝ったこと自体ではなく、その勝ち方だったとTechCrunchに語っている。Faradayが動いているのは「Qwen 3.6」という270億パラメータの比較的小さなモデルだ。パラメータ数はモデルの規模や学習コストの目安になる指標で、桁違いに小さいモデルが大規模モデルに勝ったという主張だからこそ注目を集めている。

Inherentが重視したのは正解率だけではない。どの実験をどう設計すべきかを判断する「研究のセンス」を、あらかじめルールとして教え込むのではなく、良い結果に報酬を与える強化学習によって身につけさせる方針を取った。一方でコーディング作業は自前のツールを作らず、OpenAIのGPT-5.5 Codexをそのまま使わせている。研究者が既存のソフトウェアを組み合わせて研究を進めるのと同じ発想で、Faradayに「何でも自作させる」のではなく既存のツール群を使いこなす能力を持たせようとしている。

この動きが仕事の現場に投げかけているのは、AIの役回りが「頼めば結果を返す道具」から「自分で試して報告してくる相手」へ移りつつあるという変化だ。Hughes氏は理想のチームメイトとして、「気になったので実験してみた、この結果をどう思う」と自発的に持ちかけてくる同僚を挙げている。指示を待たずに作業の一部を引き取り、あとで結果を持ち帰ってくるという構図は、研究に限らず、会議後の議事録作成や資料整理といった知識労働の周辺業務にも当てはまりやすい。

この発表を読むうえでまず割り引いておくべきなのは、比較結果が第三者による検証ではなく、Inherent自身のブログでの公表にとどまっている点だ。AI企業が自社モデルの性能を発表する際、比較対象のモデルの版・プロンプトの与え方・採点基準を自社に有利に設計してしまう余地は常にある。「大規模モデルより小型モデルが優れていた」という主張自体は技術的に不可能ではないものの、独立した第三者機関による再現・検証を経るまでは、一つの企業の自己申告として留保つきで受け取るのが妥当だ。

もう一つ、この件が示しているのは「代行」の質の違いである。単に作業を肩代わりするだけのAIと、Faradayのように「なぜその実験を選んだか」まで報告してくるAIとでは、任せる側が引き受けるリスクが変わる。前者は結果の正しさを検証する手間がすべて人間側に残るのに対し、後者は判断の根拠が言語化されている分、人間は結果そのものではなく判断のプロセスを評価すればよくなる。会議の録音を要約に変えるような日常的な代行作業でも、単に文字起こしを返すだけの仕組みと、要約の際に何を重要と判断したかが読み取れる仕組みとでは、後で人間が確認にかける時間が大きく違ってくる。AIに任せる範囲を広げるほど、結果の精度そのものより、判断の過程がどこまで見えるかが実務上の価値を左右するようになる。

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