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2026年08月06日

Whisper・GPT-4o Transcribe・Geminiを実測比較|精度は条件で逆転する

執筆: Takumi(Memolith開発者)
メモリスメモリスによる要約
  • クリーンな音声ではGPT-4o Transcribeが正確、Whisperは同音異義語を複数回誤変換
  • 方言・古い録音のような難条件ではGemini 2.5 Flashが最も内容を落とさず書き起こした
  • 警報音などの非音声音に対し、Whisperだけ「ああああああ」という幻覚テキストを生成した

「文字起こしAIはどれも同じような精度だろう」——そう思っている人は多いはずです。しかし、実際に複数のモデルへ同じ音声を投げて書き起こしを比べてみると、「どのモデルが一番良いか」ではなく「どの条件で何が弱いか」がモデルごとに違うことがわかりました。

この記事では、OpenAIのGPT-4o Transcribe・Whisper、GoogleのGemini 2.5 Flashという3つのモデルに、性質の異なる3つの実音声を投げて書き起こしを比較した結果をそのまま公開します。

検証方法

条件をそろえるため、3つのモデルに同じ音声ファイル・同じ指示文を渡し、書き起こし結果をそのまま比較しました。

  • GPT-4o Transcribe(OpenAI、メモリスが採用しているエンジン)
  • Whisperwhisper-1、OpenAIの従来モデル)
  • Gemini 2.5 Flash(Google、マルチモーダルモデルとして音声を直接処理)

使用した音声(すべてライセンスをクリアした実音声)

自分で読み上げた音声や合成音声(TTS)では、実際の音声認識の難しさを再現できません。そこで、著作権・利用規約が明確な実在の音声を3種類用意しました。すべてWikimedia Commonsで公開されている、再配布・改変が許可された音声です。

  1. 京都市方言の自然会話(1964年6月収録) — 20代女性2人による方言での自然な会話。国立国語研究所(収録:上村幸雄・徳川宗賢)が「方言録音資料シリーズ11 京都市方言」として1969年に編纂した音源。CC BY 4.0で公開されています。
  2. Spoken Wikinews 日本語版(2017年1月) — 箱根駅伝のニュース記事を読み上げたもの。CC BY 4.0。
  3. 上野原市(山梨県)防災行政無線 訓練放送(2021年11月) — 緊急地震速報の訓練放送。パブリックドメインで公開されています。

出典・権利者に感謝します。各リンク先で元データと詳細なライセンス情報を確認できます。

結果1:クリーンな発話条件 — GPT-4o Transcribeが正確、Whisperは同音異義語で失点

Spoken Wikinewsの読み上げ音声(スタジオ品質に近いクリアな発話)では、3モデルとも大意は問題なく書き起こせました。ただし細部を見ると差がはっきり出ます。

Whisperの書き起こしには、以下のような同音異義語の誤変換が複数箇所ありました。

実際の発話 Whisperの書き起こし
20の大学 二重の大学
総合3 連覇 総合3 連科
完全3 連覇 完全3 連科
いわゆる3 いわゆる3

一方、GPT-4o Transcribeはこの4箇所すべてを正確に書き起こしていました。クリアな音声であっても、モデルによって同音異義語の処理精度に明確な差があることが確認できます。

結果2:難条件(方言・古い録音) — Geminiが最も内容を落とさず、GPT-4o Transcribeは一部をまるごと欠落

1964年の京都方言の会話は、条件としてはかなり厳しいものです。古いテープ特有のノイズがあり、方言特有の言い回しも多く含まれます。

ここでは評価が入れ替わりました。Geminiが最も完全に会話を書き起こし、他の2モデルが落としている以下の発言も拾えていました。

「知らん。そこ、電話たらたんとちゃうんかって言うて。大きい声。そうやん。」

これに対し、GPT-4o Transcribeはこの一区間をまるごと欠落させ、直前の発言から次の発言へ飛んでいました。要約されたのではなく、文字通り存在しない扱いになっていた点は見過ごせません。

Whisperはこの条件でさらに別の問題を見せました。実在するホテル名「都ホテル」を「部屋ホテル」と誤認識し、聞き取りにくい箇所では文脈と噛み合わない文章を生成する様子も見られました。

結果3:警報音が混じる条件 — Whisperだけが非音声音を「幻覚」した

上野原市の防災放送には、緊急地震速報を知らせる電子音(警報音)が発話の前に3回挿入されています。この音声ではない部分への対応で、最も分かりやすい差が出ました。

  • Gemini・GPT-4o Transcribe:警報音を正しく無視し、実際に発話された内容だけをクリーンに書き起こし
  • Whisper:警報音の箇所を「ああああああ ああああああ」という、実際には存在しない発言に変換。しかも3回とも同じパターンで再現されました

これは音声認識モデルの既知の弱点である「非音声音・無音への幻覚(ハルシネーション)」が、実際のデータで再現された形です。実際の会議でも、通知音・着信音・物を置く音などが録音に混じることは珍しくないため、他人事ではありません。

まとめ:単一の「最強モデル」は存在しない

3つの条件を通して見えたのは、モデルごとに得意・不得意がはっきり分かれるということです。

  • クリーンな発話:GPT-4o Transcribeが正確、Whisperは同音異義語に弱い
  • 方言・古い録音などの難条件:Geminiが内容を落としにくい、GPT-4o Transcribeは一部欠落のリスクがある
  • 警報音などの非音声音:GPT-4o Transcribe・Geminiは正しく無視、Whisperは幻覚を起こす

メモリスはGPT-4o Transcribeを採用していますが、今回の実測が示す通り、どのエンジンにも固有の弱点があるというのが率直なところです。特に「一部の発言をまるごと欠落させることがある」という結果は、精度の高さとは別軸のリスクとして知っておく価値があります。だからこそ、決定事項や固有名詞のように後から影響が大きい箇所は、AIの下書きをそのまま確定させず、人が一度目を通す運用が安全です。

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よくある質問

GPT-4o TranscribeとWhisper、どちらが精度が高いですか?

条件によります。クリーンな発話ではGPT-4o Transcribeが同音異義語の誤変換なく正確でしたが、方言混じりの古い録音では逆に会話の一部をまるごと落とすという弱点も見られました。一方Whisperはクリーンな音声でも「20の大学」を「二重の大学」、「3連覇」を「3連科」と誤変換するなど、同音異義語に弱い傾向が確認できました。

AIの文字起こしで、警告音や物音がおかしなテキストに変換されることはありますか?

あります。今回の実測では、地震早期警報の音(非音声)に対してWhisperだけが「ああああああ」という実際には存在しない発言を生成しました(幻覚・ハルシネーションと呼ばれる既知の弱点です)。GPT-4o TranscribeとGeminiは同じ音声で警報音を正しく無視しています。

文字起こしAIを選ぶとき、精度以外に何を確認すべきですか?

単一のモデルが常に最も正確とは限らないため、重要な会議では書き起こし結果をそのまま鵜呑みにせず、決定事項や固有名詞など重要な箇所だけでも見直す習慣が安全です。特に音質が悪い・専門用語や固有名詞が多い会議では、AIの下書きを人が確認する前提で運用するのが現実的です。

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