
- PowerToysのAdvanced PasteがNPU搭載PC向けモデルPhi Silicaに対応
- Phi Silicaは2026年10月以降Aion Instructへ置き換え予定
- 選ぶべきは今のモデル名でなく操作の習慣化
Microsoftが8月9日、無料の便利ツール集「PowerToys」のプレビュー版v0.101.2211.0をGitHub上で公開した。目玉は、クリップボードの内容を整形して貼り付ける「Advanced Paste」機能の中の「AIを使用して貼り付ける」だ。ここで選べるAIモデルに、新たに「Phi Silica」が加わった(出典:PC Watch)。
Phi Silicaは、NPU(AI処理専用の演算装置)を積んだ「Copilot+ PC」向けに作られた小型AIモデルだ。小さな下書き用モデルで先に予測してから本番モデルが確認する仕組みにより、応答を高速化しているのが特徴だという。これまでAdvanced Pasteが使えるモデルはAzure OpenAIやOpenAI、Googleのクラウド系や、ローカルで動くFoundry Local・Ollamaなどに限られていた。そこにPhi Silicaが加わったことで、クリップボードの内容をプレーンテキストやマークダウン、JSONに整形するといった操作を、通信もクラウド課金も介さずにPC単体で完結できる選択肢が一つ増えたことになる。
日々のPC作業で言えば、コピーしたメモを議事録用に整形する、URLの羅列を箇条書きに直す、といった小さな加工作業がその場で完結するようになる、という話だ。クラウドAPIへの通信待ちや利用料を気にせず、ちょっとした整形をPCだけで済ませられるのは素直にありがたい。
ただし、この変化を「NPU搭載PCを買えば、あるいはクラウドの代わりにローカルモデルを選べばコストとプライバシーの悩みが片付く」と単純化するのは早い。Advanced Pasteは今もAzure OpenAIやGoogleといったクラウド系モデルを選択肢として残している。理由は単純で、Phi Silicaのような小型モデルは軽くて速い一方、長文の要約や複雑な指示への対応力はクラウド側の大型モデルに分がある。加えて、当のPhi Silica自体が2026年10月以降「Aion Instruct」という後継モデルに置き換わる予定だと明かされている。開発者はこれまでPhi Silicaを使うのに、悪用防止のためMicrosoftへ事前申請して機能IDと利用許可を発行してもらう仕組み(LFAトークン)を踏む必要があったが、Aion Instructではこの手続きが不要になるという。足元のモデル名は、半年も経たずに置き換わる前提のものだ。
だとすれば、今この変化から学んで習慣にすべきは「Phi Silicaを使う」ことではなく、「その場で貼り付け前にAIへ軽い整形を頼む」という操作そのものだ。事前申請の壁が外れれば、同じような貼り付け時AI加工を組み込むアプリはこの先増えていく。モデルは差し替わっても、クリップボードの中身をその場で整えるという操作の型は残る。今のうちにその型を業務フローに組み込んでおけば、裏側のモデルが何に変わっても乗り換えのコストは小さくて済む。
こうした「その場で完結する軽い処理」と対照的なのが、会議録音のような重い処理だ。メモリスは録音中にその場で文字を起こすのではなく、録音が終わった音声をAIに渡し、数分かけて議事録を仕上げる方式を取っている。軽い整形はローカルの小型モデルでその場に、重い書き起こしはクラウド側で時間をかけて、という役割分担は今後もはっきり分かれていきそうだ。
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