- 64kbps・16kHzまではほぼ無劣化、固有名詞1箇所の誤りのみ
- 24kbps・8kHzから意味を変える誤りが複数発生(『落選した』→『学生した』等)
- 電話帯域相当の12kbpsでは年号を取り違えるなど、実用に耐えない誤りが増加
「スマホの録音品質が悪いと文字起こしの精度が落ちる」——これは直感的には正しそうですが、具体的にどこから崩れ始めるのかは、実際に試してみないとわかりません。しかもOpenAIの公式ドキュメントには、ファイルサイズの上限(25MB)と対応フォーマットの記載こそあれ、「これくらいのビットレート・サンプルレートを推奨する」という具体的な数値は公開されていません。だからこそ、自分で試して確かめる価値があります。今回は同じ音声を意図的に劣化させ、前回の検証で使ったクリーンな音声を素材に、GPT-4o Transcribeでの文字起こし精度がどう変化するかを実測しました。
検証方法
ベースとなる音声は、前回の検証で使用したSpoken Wikinews日本語版(CC BY 4.0)です。同じ音声をffmpegで以下の4段階に加工し、それぞれをGPT-4o Transcribeで文字起こししました。
| 段階 | 設定 | イメージ |
|---|---|---|
| ①元音声 | 高音質 | 良好な録音環境 |
| ②64kbps・16kHzモノラル | 一般的なボイスメモ相当 | スマホの標準的な録音 |
| ③24kbps・8kHzモノラル | 古い電話品質相当 | 遠い・小さい声での録音 |
| ④12kbps・8kHzモノラル+帯域制限(300〜3400Hz) | 電話回線帯域相当 | スピーカー越し・悪条件のBluetoothマイク等 |
結果:64kbpsまではほぼ無傷、24kbps以下から意味が変わる誤りが出る
4段階での誤り数(固有名詞・数字・意味を変える誤りの合計)をグラフにすると、劣化の様子がはっきり見えます。
①・②:ほぼ差がない
元音声と②(64kbps・16kHz)を比べると、誤りは固有名詞1箇所(「デイリースポーツ」→「レイリースポーツ」)だけでした。内容を左右する誤りはありません。一般的なスマホのボイスメモ相当の品質であれば、文字起こし精度への影響はほぼ無視できるということです。
③:24kbpsから意味を変える誤りが複数出現
③(24kbps・8kHz)になると、明らかに性質の異なる誤りが増えます。
| 正しい内容 | ③での誤り |
|---|---|
| 予選で落選した大学 | 予選で学生した大学 |
| 同大学は10月の | 東大学は10月の |
| 全日本大学駅伝 | 県日本大学駅伝 |
| 我が国の大学駅伝 | まだ国の大学駅伝 |
「落選した」が「学生した」になるなど、文の意味そのものが変わってしまう誤りが出始めます。単なる誤字ではなく、後から読んだ人が誤解しかねないレベルの変化です。
④:電話帯域相当では、年号の誤りまで発生
④(電話帯域相当)ではさらに誤りが増え、なかには実務上見過ごせないものもありました。
- 平成29年 → 平成24年(年号を5年も取り違え)
- 史上 6校目 → 出場 6校目
- 大学駅伝主要 3大会 → 大学駅伝諮問 3大会
- いわゆる3冠を決めた → 今見る3回を決めた(「3冠」という重要な結論部分が完全に崩壊)
年号のような数字の誤りは、議事録としては致命的です。日付や金額を含む発言がこの品質で録音されていた場合、AIの下書きをそのまま信じるのは危険だとわかります。
まとめ:スマホの標準録音で十分、ただし「電話越し」は要注意
今回の実測から言えるのは、次の2点です。
- 一般的なスマホのボイスメモ相当(64kbps程度)であれば、文字起こし精度への影響はほぼない。 録音アプリの設定を過剰に気にする必要はありません
- 電話のスピーカー越しに録音する、遠くの声を無理に拾う、といった条件(8kHz前後まで劣化する状況)では、数字や固有名詞を中心に意味を変える誤りが増える。 こうした状況で録音した場合は、AIの下書きの数字・日付・固有名詞だけでも人が見直す方が安全です
議事録アプリを使う上で一番確実な対策はシンプルです。マイクから離れすぎない、スピーカー越しではなく直接録音する——この基本を守るだけで、今回確認したような劣化はほぼ避けられます。
あわせて読みたい:
議事録AIを試してみませんか?
難しい設定は不要です。いつもの会議で、録音ボタンを押すだけ。面倒な議事録作成から解放されましょう。
iOS / Android 対応